AIに上手に仕事を任せるコツは、新人スタッフに仕事を頼むときとまったく同じです。
「AIに頼んでみたけど、なんだかピンとこない答えが返ってきた」。そんな経験はありませんか。AIの使い方の講座やセミナーで、私が一番よく聞く声です。
でも、ちょっと思い出してみてください。入社したばかりの新人スタッフに「いい感じの資料を作っておいて」とだけ頼んだら、どうなるでしょう。きっと、期待とは違うものが出来上がってくるはずです。
AIも同じです。この記事では、AIに仕事を任せるときに伝えたい5つのことを、人に頼む場面と並べながらご紹介します。難しい専門用語は使いません。普段の仕事の頼み方を、そのままAIに向ければいいのです。
なぜAIは”新人スタッフ”と同じなのか
AIは、とても優秀な新人スタッフのような存在です。文章を書くのは速く、知識も豊富で、文句も言わずに何度でも書き直してくれます。
けれど、新人スタッフと同じく、あなたの会社のこと、お客様のこと、今回の仕事の事情を何も知りません。 知らないことは、想像で埋めるしかありません。だから、一言だけで頼むと「一般的な、無難な答え」が返ってくるのです。
逆に言えば、伝えるべきことを伝えれば、AIはきちんと応えてくれます。必要なのは特別な技術ではなく、仕事を任せる側としての「伝え方」です。
仕事を任せるときに伝える5つのこと
伝えることは、目的・背景・条件・形式・期限の5つです。ここでは「お店の年末年始の営業案内を作ってほしい」という場面で、人とAIへの頼み方を並べてみます。
| 伝えること | 新人スタッフに頼むなら | AIに頼むなら |
|---|---|---|
| 1. 目的 | 「常連さんに、年末年始も安心して来てもらいたいんだ」 | 「常連のお客様に、年末年始の営業日を知らせて来店につなげたいです」 |
| 2. 背景 | 「うちは地元の人が多い、小さなパン屋だからね」 | 「私は沖縄で、地元のお客様が中心の小さなパン屋を営んでいます」 |
| 3. 条件 | 「堅苦しくなく、いつもの感じで。休みの日は必ず入れて」 | 「親しみやすい口調で。休業日は12月31日〜1月3日です」 |
| 4. 形式 | 「店頭に貼る紙と、LINEで送る用の短いのがほしい」 | 「店頭掲示用(200字程度)と、LINE配信用(80字程度)の2種類を作ってください」 |
| 5. 期限 | 「来週の月曜には貼り出したいから」 | 「12月中旬に掲示・配信します」 |
1. 目的:何のための仕事か
一番大切なのが目的です。「案内文を作る」はやることで、目的は「お客様に来店してもらう」ことです。目的が伝わると、AIは「来店したくなる一言」まで考えて加えてくれます。
2. 背景:あなたは誰で、相手は誰か
あなたの仕事やお店のこと、読む人がどんな人かを伝えます。同じ案内文でも、都会のオフィス向けと地元の常連さん向けでは、言葉選びがまったく違います。
3. 条件:守ってほしいこと
口調、必ず入れてほしい情報、使ってほしくない言葉などです。日付や金額のような正確さが必要な情報は、AIに推測させず、あなたが伝えます。
4. 形式:どんな形で受け取りたいか
文字数、箇条書きか文章か、何パターン欲しいかなどです。形式を伝えるだけで、そのまま使える状態で返ってくるようになります。
5. 期限:いつ、何に使うか
AIはすぐに答えてくれるので、人と同じ意味での締め切りはありません。けれど「いつ使うものか」を伝えると、季節のあいさつや時期に合った表現を選んでくれます。急ぎで仕上げたい場合も、「まず簡単に」と伝えれば、要点を絞った答えが返ってきます。
5つを組み合わせると、頼み方はこう変わる
実際の頼み方を、ビフォーとアフターで比べてみましょう。
ビフォー(一言だけ)
年末年始の営業案内を作って。
これでも案内文は返ってきます。ただし、どんなお店かも、休みがいつかも分からないので、「〇月〇日〜〇月〇日」と空欄だらけの、どこにでもある文章になりがちです。
アフター(5つを伝える)
私は沖縄で、地元のお客様が中心の小さなパン屋を営んでいます。常連のお客様に年末年始の営業日を知らせて、休み前と休み明けに来店してもらいたいです。 休業日は12月31日〜1月3日、1月4日から通常営業です。親しみやすい口調でお願いします。 12月中旬に使うので、店頭掲示用(200字程度)とLINE配信用(80字程度)の2種類を作ってください。
文章は少し長くなりましたが、書いてあることは、新人スタッフに口頭で伝える内容とほとんど同じです。これだけで、日付が正しく入り、お店の雰囲気に合った、そのまま使える案内文が返ってきます。
そのまま使える「頼み方の型」
毎回ゼロから考えるのは大変なので、型を用意しました。スマホのメモ帳に保存しておき、【 】の中を書き換えて使ってください。
私は【あなたの仕事・立場】です。
【目的:何のために】のために、【やってほしいこと】をお願いします。
読む人・使う相手は【相手】です。
【条件:口調、必ず入れること、避けること】でお願いします。
【形式:文字数、箇条書きか文章か、何パターンか】で作ってください。
【期限:いつ、何に使うか】に使います。
全部を埋める必要はありません。まずは目的と背景の2つを伝えるだけでも、答えは大きく変わります。慣れてきたら、少しずつ項目を増やしていきましょう。
うまくいかないときは「聞いてもらう」「直してもらう」
新人スタッフへの指示が一度で完璧に伝わらないように、AIも一回で理想の答えが出るとは限りません。そんなときは、次の2つを試してください。
1. 足りない情報を聞いてもらう
何を伝えればいいか迷ったら、最後にこう添えます。
作る前に、分からないことがあれば質問してください。
するとAIのほうから「対象のお客様の年代は?」「価格は入れますか?」と聞き返してくれます。気の利く新人スタッフが確認に来てくれるのと同じです。
2. 返ってきた答えを直してもらう
答えがいまひとつでも、一から頼み直す必要はありません。「もう少し短く」「2行目をもっと温かい表現に」「沖縄らしさを少し入れて」と返すだけで、どんどん良くなります。
そして最後に、日付や金額、お店の名前などは必ず自分の目で確認しましょう。AIは間違えることがあります。仕上げの確認は、任せた側の大事な仕事です。
まとめ:AIへの頼み方は、人への頼み方
AIに仕事を任せるときに伝えるのは、目的・背景・条件・形式・期限の5つ。どれも、新人スタッフに仕事を頼むときに自然と伝えていることばかりです。
つまり、仕事を人に任せてきた経験のある経営者の方ほど、AI秘書を上手に使いこなせる素質があります。特別な勉強は要りません。いつもの頼み方を、スマホのAIにも向けてみてください。
シリーズの全体像は、まとめ記事「AI秘書の作り方|スマホに眠るAIを、あなた専属の秘書にする方法」をご覧ください。次回は、同じ頼み事を「一言版」と「5つを伝えた版」で比べ、AIの答えがどこまで変わるのかを実例でお見せします。
「自分の仕事に当てはめるとどうなるのか」「社内で頼み方をそろえたい」という方は、お気軽にご相談ください。
